ブラックホール

私の部屋には、ブラックホールがある。絶対にある。
そうでなければ説明のつかないなくしものの数々が・・・。
愛用の爪切りは、いったいどこへ?!
自分もそのうちすいこまれるかも。
ケルトの異界や神隠しについての神話や昔話が、何の根拠もなく存在するはずないもの。うんと昔から、私の部屋のブラックホールはきっとあったにちがいない。

パラレルワールドをあつかったお話には、ついついひきこまれてしまうけど、最後に戻ってこれないオチはこわい。そのパラレルワールドが、「サルの惑星」みたいなダイナミックなものじゃなくて、すごく微妙だったりするとさらにこわい。
藤野千夜『ルート225』の微妙さは、ピカイチ。私の知っているパラレルワールドもので、一番こわいお話だったかも。弟の同級生が死んでたあたりなんか、背筋がぞくぞくした。本当におこりそうな、現実にそれを経験している人がいても、ちっともおかしくないかんじだ。
こわいにもかかわらず、もどってこないオチのニーズは、高いと思う。きっとみんな、潜在的に戻りたくないのだ。

私の部屋のブラックホールは、どこへつながっているのやら。
それともそれは、現実逃避の幻なのかな。