サンヒョクがかわいそう

電車のなかで、ずーっと、「チッキチョー」といいながら、手すりをパンチしている人がいた。振動が椅子に伝わってきた。きっと手がじんじんしてると思う。

刺激しないように、目を合わせないようにと思いながら、なんちゃって車掌さんが、なつかしくなった。
今でも忘れられない江ノ電のなんちゃって車掌さん。
ホンモノの車掌さんより先に、独特の鼻にかかったマイク声でアナウンス。
「つぅぎぃは〜長谷〜。長谷でございま〜す。お出口は〜右側で〜す」
ずいぶん鮮明なアナウンスだと思ったら、目の前の青年が手を口にあててやっている。野球帽まっすぐかぶってリュックサックをきちんとしょっている瞳がくりっとした青年。
出口の左右も駅もカンペキなのだ。本当に電車を愛しているのが伝わって気持ちがよかった。